「白衣をAIでアップデート」:クラシコ×Synfluxが描く、サステナブルな医療ユニフォームの新常識
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医療現場を支えるユニフォームづくりを通じて、デザインや機能性の追求とともに、より環境に配慮したものづくりへの挑戦を続けてきたクラシコ。
過去には、生産過程におけるCO2の排出量を52.7%カット・染色にかかる様々な資源を削減した「先染め」の生地を使った商品を発売しました。
そんな私たちが、次世代のものづくりを形にするSynflux社と手を取り合い、どのようにして新しい価値を生み出したのか。
今回は、クラシコが進めている新たな取り組みの一環として最先端テクノロジーを活用したサステナブルなファッションを提案するSynflux社とのコラボプロジェクトについて、その裏側をプロジェクトの中心人物であるMDチームの宮武に語ってもらいました。
まず最初に、Synflux社と一緒に取り組むことになったきっかけについて教えてください。
ファッション業界は消費パターンが日々変化していきます。その中で、クラシコが提供するユニフォームは単なる衣服ではなく、“仕事道具のひとつ”としての大事な役割を持ちます。だからこそ、持続可能な取り組みを通じて、より良い価値を提供する必要があると考えていました。
元々ニュース記事などで、国内のメーカーやブランド、海外のコレクションブランドともお仕事をされているSynfluxさんのことを知っていたのですが、その中で、特に彼らがAIを活用して「Reduce 」(※)に取り組まれている点に強く惹かれました。「こんな取り組みを自分たちのものづくりにも取り入れられないだろうか」と考え、コンタクトを取ったことがきっかけです。
※Reduce→Reuse→Recycleの順を心がけることで、ムダなごみを減らし、資源を生かすことにつながる。
今回のプロジェクトについて教えてください。
今回の取り組みでは、クラシコ製品の型紙をSynfluxさんが開発した「Algorithmic Couture」(※)で最適化しました。具体的には、1枚の生地をできる限り無駄なく使えるように、型紙の配置をAIで分析・調整。通常の人力では膨大な時間がかかる作業ですが、AIの力を借りて効率的に実現できました。
※Synflux社が開発した衣服生産時の素材廃棄を最小化するため、独自のアルゴリズムを活用したデザインシステム。

従来の型紙は上記のようにスペースが生まれるため、廃棄する部分が多くなってしまう課題が
取り組む中で、Synflux社のどのような部分に魅力を感じましたか?
特に感銘を受けたのは、Synfluxさんがクラシコのデザインやアイデンティティを尊重しながら廃棄物削減に取り組んでくださった点です。具体的には、「デザイン」と「アート」の境界を理解し、それを超えていること。デザインというのは課題解決を目的とするものですが、Synfluxさんはその目的を、社会的な意義やサステナビリティにも広げている姿勢が素晴らしいと感じました。
また、「リサイクル」や「オーガニックの生地」など既存の方法ではなく、根本的な生産プロセスの最適化に挑戦し、“Reduce=ムダなゴミを減らす”ことに注力している点も改めて感銘を受けました。
また、単にゴミを減らす取り組みとしてだけであれば、型紙を切り刻んで細かくすれば良い話ですが、そうするとデザインも大きく変わるだけではなく、その分縫製箇所が増えるため、縫製工場での工数や電気代などが上がってしまい“持続可能な取り組み”とはほど遠くなり、本末転倒です。
そうしたことをせず、配置や向きを工夫するだけで効率化を実現するというアプローチには、企業文化やブランド価値、社会貢献に対する深い想いが感じられました。

実際に取り組む中で、どのような発見や苦労がありましたか?
通常、洋服のパーツを決められた生地(巾)の中に効率よく配置する作業は、いわばパズルのようなものです。さらに、様々なデザインの調整も同時に行う必要があり、人力では時間がどれだけかかるか予測がつきません。また、作業する人のバイアスが結果に影響を与えることもあります。しかし、AIを活用すれば、膨大なパターンを短時間で処理し、効率的かつバイアスのない形で最適な解を見つけることが可能だということを、今回のプロジェクトを進めていく中で発見した大きなポイントのひとつでした。
大変だった点でいうと、まずは社内でのプレゼン時。当初は「デザインが変わってしまうのでは?」、「着心地が変わるのでは?」といった懸念などが多く寄せられました。しかし、メンズデザイナーやMDのメンバーが強く背中を押してくれたおかげで、まずはメンズアイテムの一つの商品からプロジェクトをスタートすることができました。
また、先述の通り重要なポイントは「デザインを崩さないこと」でした。AIによって型紙の向きや配置を最適化しつつ、デザインやブランドのアイデンティティを損なわないように進めました。これが非常に難しい挑戦でしたが、Synfluxさんの技術力と柔軟な対応でデザインと着心地を変えずに製品化することができました。
このプロジェクトに取り組む意義について、どのようにお考えですか?
やはり、一番大きな意義は環境への配慮です。アパレル業界は非常に多くの廃棄物を生み出しており、従来の方法では根本的な解決が難しい現状があります。今回の取り組みでは、単にゴミを減らすだけでなく、効率的な生産システムを構築することで、より持続可能なメディカルアパレルの実現を目指しています。
さらに、医療従事者のためのユニフォームという性質上、機能性や快適性を損なわずに環境負荷を低減することが求められます。Synfluxさんの技術を活用することで、こうした課題を解決しつつ、より良い商品を提供できると感じています。
今回のプロジェクトが社会全体にどのような影響を与えると考えていますか?
このプロジェクトが持つ社会的意義は非常に大きいと思っています。
今回のプロジェクトを通じて私たちが目指すのは、単なるコスト削減や効率化だけではありません。医療の現場で働く方々にとって快適で高品質なユニフォームを提供しながら、環境に優しい選択肢を提示するという点が今後は重要になっていきます。
繰り返しになりますが、衣類の生産は環境負荷が非常に大きい産業のひとつです。その中で、Synfluxさんとの取り組みは、廃棄物の削減という直接的な成果にとどまらず、クラシコが業界全体に新しい基準を示す役割を果たせると考えています。
このような取り組みが広がれば、環境への意識が業界全体で高まり、より持続可能な未来を築く一助になるのではないでしょうか。

今後の展開について教えてください。
次のステップとしては、医療スクラブの定番ラインへの導入を目指しています。生産枚数が多いものは、環境へのインパクトも非常に大きくなります。さらに、この取り組みを長期的に続けることで、さらに社会全体に与える影響を大きくしていきたいと考えています。
また、Synfluxさんとは今後も新しいデザインや技術の可能性を探りながら、さらなる革新を目指していきたいと思っています。今回のプロジェクトをきっかけに、より持続可能で魅力的なものづくりを実現していければと思います。
最後に、このプロジェクトを通して読者のみなさんに伝えたいことはありますか?
これまでアパレル業界では、環境問題への取り組みが後回しにされることも多かったと思います。しかし、今回のプロジェクトを通じて感じたのは、AI技術の進化がそれを変えつつあるということです。持続可能性を追求することがデザインや機能性の妥協を意味する時代は終わりつつあります。
私たちは、これからも環境に配慮しつつ、使う人々に喜んでいただける商品を作り続けていきます。そして、この取り組みが、少しでも多くの方々に「未来のものづくり」について考えるきっかけになれば幸いです。